キャップの溝にこびりついた何か

剥がすの楽しいよね

M.S.S Project Tour 2017 PHOENIX -Eternal Flame- FINAL at YOKOHAMA ARENA

 まだ、夢のその先にたどり着けていないんじゃないんかと思う。
 あっという間の4時間だった。息つく暇もなく、どこかに眼を放す余裕もなく、公演の間だけ、心をすっぽり持っていかれた心地だった。

 

 オープニングムービーの追加シーンから始まり、センターステージでのヒーローショー。少年の多くが一度は通るであろう、ヒーローになりたいという願いを、こんな形で実現させることもあるのかと。幼い彼らがヒーローになることを夢見たのかはわからないけれど、色々なことが巡り巡って、叶えようともせずいつの間にか宝箱にしまっていた夢を意図せず叶えてしまうことってあるんだろうなあ。いや、かっこいいじゃん。特撮。

 

 今ツアーで推しがヒーローになったわけだけれど、今回のことがなくても昔から私にとってMSSPってヒーローだったし、今もヒーローだなあと強く思う。0から1を作れる人だったり、夢をかなえる人だったり、自分を強く持つブレない人だったり、友達の夢を叶えるために力を尽くせる人だったり、私が憧れる要素がみんなにある。MSSPはアイドルみたいだなあと時々思ったり言葉にしたりしてきたものの、ここにきてアイドルというよりはヒーローという言葉の方がしっくりくるなと感じる。MSSPのようになりたいなと憧れる。それは決して表舞台に立ってたくさんの光に囲まれたいとかそういうことじゃなくて、その在り方、心の持ち方に憧れる。悪を滅した瞬間ではなく、傷だらけになってもなおその瞳の光を失うことなく立ち上がろうとするヒーローの在り方に強く惹かれるように。(なんかM.S.S.Phoenixの詞にも通ずるところがあって胸が苦しくなるね)

 

 ヒーローショーを1万人超の観衆に囲まれた中で敢行するの、結構勇気のいる決断だったんじゃないのかなと思うんだが、リハ時に打ち合わせもないのに一斉にメンバーがえおえおを虐め始め、それを本番でもやってしまうという暴挙に出るあたり、ショー自体はそれほど気負ってなかったのかもしれない。怪人さんたちが「俺達でゲーム実況するか~」って言ってたのも謎の面白さがあった。怪人の皆さん雪の中来てくださってありがとうございます(ってMSSPも言ってました)。ほんと、ほぼ前座みたいなものなのに最初からクライマックス。横アリでサプライズに遭遇することはあるだろうなと思ったけれど、開幕から驚かされるとは……。はちゃめちゃ派手でかっこよくて、やっべ~となった矢先、次のゲーム実況パートで、クリーニングの末縮んでしまった戦隊衣装の袖について、「ななぶたけ(七分丈)だよこれ」と言い放ったFBさんに、やっぱりいつものMSSPだな~と和みの笑みがこぼれた。

 

 実況パートは仕込みかと思えるくらい神掛かった展開が連続したし(開幕のアルコールランプ炎上、キモオタあろおじさん、鬱など)、ラスト1周でなぜかきっくんから鉄アレイが回されてくるわ、FBさんは横アリをミュート状態するという偉業を達成し、回されてきた鉄アレイで勝利をおさめたろませんと鉄アレイを回したきっくんがまさかの同チームで勝利と、アナログゲームにおけるMSSPって何か実況の神がついてますよね??と思わずにはいられない。突然のぴぶー難民救済もね、地球防衛軍もね、ムネアツ的には物足りないかもしれないけれどオチが本当によかった。

 

 自分の座席から見て面白かったのは、地球防衛軍パートで下手からFAKEって並んで座っている姿勢が、FAKはそろってるのにEだけ浅く腰かけて背もたれ(ほどちゃんとしたやつじゃないけど)にもたれてるとこですね。見ようによっては背後の幕にもたれてるようにも見えた。

 

 幕間動画もあれさすがに事前に打ち合わせしましたよね???と思ってしまうくらいの仕上がりに涙があふれるほど笑った。いや、おもしろいって本人が豪語するだけあるわ。それにしても、どれだけあろま無双されたことをトラウマに持っているのか……。

 

 あろまさんの弱点が高校時代のデスソースまで遡らないといけないの本当に屈強がすぎるし、執拗にきっくんかたつむりをぶつけようとするFBさんが謎すぎる。どれだけ気に入ってるんだ。

 

 そして、映像が終わり華々しいオープニング。会場を光線が埋め尽くし、レーザービームが彼らのロゴを形作る。なんとなくSMT2017のオープニングを思い出す光の束は、スクリーンだけでなく会場全体に展開された本物の照明が作り出す始まりの知らせ。

 

 彼らが初めて横浜アリーナに立ったあの日のリベンジが、ここで始まる。
 
Set List
1.Static Flare
2.ENMA DANCE
3.Borderlands勝手に作ったテーマ曲
MC
4.11光年クエス
5.幾四音 -Ixion-
6.Egoist Unfair
MC
7.Glory Soul
8.KIKKUNのテーマ
9.L4D勝手に作ったテーマ曲
MC
10.Wish ~この場所で~
11.ReBirth
12.M.S.S.Phantasia
MC
13.M.S.S.Phoenix
 
a-1.M.S.S.Party
MC
a-2.MSSPソロメドレー(Awakening ~ MISSING LINK ~ I'll be... ~ WAKASAGI)
MC
a-3.M.S.S.Planet
a-4.THE WORLDS
MC
a-5.We are MSSP!
 
 こうしてみるとインスト曲が最初のStatic Flareしかない……これまでの恒例曲だったPhew!が入っていない……。
 全体的に観衆の感情をいろんな意味で揺さぶるような曲が多い気がして、横アリのセトリ、強烈だったな。
 ちなみに、今回の座席は上手(客席から見て右、メンバーがEKFAと並んでるうちのFA寄り)のアリーナ前方列。基本的にステージを観ていることができる座席だった。本当に、演者が豆粒レベルとか、人の頭で見えないとか、そういうことがなかったので個人的には恵まれた座席だったように思う。というわけで、記憶に残ったシーンはどちらかというとFBさんやあろまさんのところが多いかも。
 今までのツアーの印象として、旗振りはえおえお、ダンスはあろま、というイメージがあったので今回開幕でフラッグを振るあろまさんを見て、その認識を改めなければなあとちょっと反省した。
 というのも、全身の振り付けの仔細、やはり美しかったので。相方に見られるような勢いはなく、一方でたなびく旗のラインひとつまで計算されているような舞いは確実に強みだし、意識して作り上げたものなんだろうなと思う。どっちがいいとかいう問題じゃない。
 そして本人らもライブ後の突発生放送やブログで触れていたように、ENMA DANCEでの「踊れェ!」の直後の花火!思い返せば演出としてめちゃくちゃアツかったけれど、割と近い距離にいたせいか、事故かと誤解してしまうレベルで激しかった。びっくりした……。多分そのタイミングでちょっとモニターを観ていたせいもあると思う。その煙の向こうで浮かび上がるようにダンスが始まると、それはそれで目を剥いた。
 初っ端から、振り付けが変わっている!どこが変わったとか明確に言葉にはできないんだけど、明らかに消耗激しくなるタイプの振り付けになってるし……ソロパートは明らかに変わった!めちゃくちゃ密度が増えてうっとりしてしまう。
 きっくんのギターソロが始まるとそれを囲むように3人が集まって、こぶしを振り上げるのも、好きなんだよね……。
 
 Borderlands勝手に作ったテーマ曲では、CO2ガンのいつもの演出と同時に、ステージから炎が燃え上がる演出が追加。
 「ぼー!だー!あ~~~~、らーーーんず!!」ゴオオオオオーーッ
 迸る火柱が立つたびに、熱気が客席にも襲い掛かる。ストーブの暖かさを全身に浴び、ただでさえほてってる体から汗が噴き出した。ああいう特効、大きい会場ならではなのでほんっっと最高ですね……。あと花道をあろまさんが通ったときにCO2ガンを噴いてくれたんだけど、そこから白い粉?が飛んできてめちゃくちゃびびった。元がビビりなもんで。
 
 11光年クエストは、さ~~~ほんとFB777って何者……。2016年のツアーからソロ曲をひとり歌い続けてきた貫禄なのか、ライブ初出しの曲とは思えないクオリティをぶつけられて意味が分からなかった。コーラスを歌うきっくんも、なんだか表情が力強くて、ここで感じることじゃないのかもしれないけど、音楽組~~~ッとうなってしまう一幕だった。
 
 青い光に木霊するコーラスも束の間、ベースのなべちゃんがスポットライトに照らされ、重たいリズムを刻む演出に見入るつもりが、きっくんの口上がすっと胸に溶けてくる。
「横アリで成功するために、みんなの力が必要です」
 そんなことを……言っていたような気がする。ここでそれを言ってくるか……ずるいな……。
 幾四音、そして続くEgoist Unfairとともに、FB777とKIKKUN-MK-Ⅱのツインボーカル横浜アリーナに畳みかけられる。こんなに連続して歌えるほどになったんだなあ。曲数的な意味でも、スキル的な意味でも、他いろいろ。
 
 ここでのMCはよく覚えている。転換のためにパフォーマーの二人が袖に捌け、きっくんとFBさんのMCが始まるはずだったのに、あまりにも盛り上がりすぎてコンタクトがずれたと告白するFBさんと、優しく「直してこい?」と促すきっくん。いいの?と無邪気に再度聞くFBさんとのやり取りが、あまりにもそれまでの燃え上がった空気とギャップがありすぎる。捌けたら捌けたで「機材席で直しちゃおっかな!」だの、しゃべんのかよと突っ込むきっくんに対して「喋れはするからね!」と天の声化するFBさんの愛おしさよ。広い会場、広すぎるステージに、バックバンドはいれどひとりきりになったきっくんがなんだかちょっと寂しそうに見えただけに、この人の気配りは時々ツボに入る。
 結局目の奥にまで入り込んでしまったコンタクトは外し、しばらく片目だけの視界で進行すると言うFBさん。次の時までにスタッフにもってきておいてと頼むも、次っていつや……という感じ。相当な近視のはずだけれど、片目だけって大丈夫なのだろうかと心配になる。実際のところ、アンコールの時すら付け直すことをせず、最後まで片目だけで突っ走ったらしいことを聞いて、ちょっとビビったけれど。無事でよかったね……。片目だけめちゃくちゃぼやぼやって、どういう見え方になるんだろう……
 
 そしてGlory Soul! 恒例となった殺陣も、続くKIKKUNのテーマも、L4D勝手に作ったテーマ曲も、センターステージでやるにふさわしい、華やかで楽しい演出が続く。あの広いステージの中央に、光の渦の中央に立つ4人、かっこいいなあ。
 
 きっくんがネガティブ野郎なのもうほんとよく知ってるというかいやでも勘付いちゃうから……武道館で2度はないとかそういうこと言っちゃうとことか……。ほかにいろいろな背景があってあの発言があったのかもしれないけど、それにしても幸福であるはずの瞬間に、”今この瞬間以上の出来事はきっと未来にないだろう”と思ってしまっている節があることは透けて見えるので、そんなきっくんが「また(横アリで)やりたいね」といったことは大勝利案件だなと思う。それとは別に、幸福の先を憂いてしまう感情はとても共感できてしまうのでそこも込みで好きだけれど。
 そんな彼が、今の境遇を込めて作ったWish~この場所で~という曲を、何も感じずに聞くというのも難しい。
 言葉に詰まるところがこの曲は極端に多くて、顔を歪めるシーンもあって、それでも時々、優しい眼差しで切実に歌う姿はあまりにも美しい。夢のその先にいるきっくんが、とても愛おしい。
 彼がこの先を不安に思わないで済むように、何かを届け続けたいなと思わせられる。
(18/12/17追記) フォロワーのレスを受けて補足すると、現場で最初からここまで素直に受け取れたわけじゃない。
最初のうちは彼のつっかえ気味な歌唱に対して、武道館公演での「Egoist Unfair」や、MC中の観客の煽り(詳細は言及しないが)を思い出していた。正直なところ、(個人的には)武道館公演は全編を通じてあまりいい思い出を持っていないだけに、思わず考えずにはいられなかった。横アリの後に、その話もした。けれど、あの武道館の後の振る舞いを見るに、制作側も思うところはあったんじゃないかと邪推した身で言えば、あの公演の影響を明確に口にした上で、あの曲を歌ったことがそもそも奇跡のようだったわけで。その事実だけで色んなことが都合よく解釈できるなと思ってしまったのだ。
あの曲が武道館と一年を経たきっくんの答えで、あの曲を横アリの舞台で歌うことがきっくんの選択ならば、それを肯定したいというのが、あの曲を最後まで歌い上げたきっくんを見届け、咀嚼した私の気持ちだった。(追記おわり)
 
 その春の風に吹かれ、きっくんに導かれたミクの歌声が横アリを満たした。この流れでくるReBirthは、THE WORLDSのアンサーソングとしての側面とはまた別の色を孕んでいるような気がする。
 きっくんの作る歌は……というか、たぶんインストでも同じなんだろうけど、きっくんの見た景色、抱いた感情がダイレクトに反映されている気がして面白いなあと思う。FBさんもそういう曲の作り方をする時もあるのだろうけれど、もっとよくわからないところから生まれている音の方が多い気がする。タイアップ曲を担当する割合の偏りってひょっとしてそこから来てるのかなあ。
 ReBirthも、こうして聞いてみると今までMSSPが歩いてきた道程を振り返って、肯定して、抱きしめて先に歩もうとしている歌のような、そんな風に感じることもできる。それも、ステージの上で最前線に立ってきた人の視点で。
 この後にM.S.S.Phantasiaが来るのも、今回のセトリの構成が明確な仕掛けをもって組まれていることを象徴させるような、そんな選択だと思う。PLDからずっと、アウトロで己が見えている景色を「俺達のファンタジア」とつぶやく彼は、いつも、何度も同じことを言うけれど、そのひとつひとつがその時抱いた本当の気持ちなんだろうなあ。
 
 改めてM.S.S.Phoenixの詞を読み解くと、とても、M.S.S.PlanetやM.S.S.Phantomを彷彿とさせる、少年の頃に抱いていたきらきらとした気持ちを歌った曲であることに気付く。どこまでも行けるような全能感は無垢だった頃の特権……それが「僕ら」という形をとって語り掛けてくるような、そんな歌だ。Aメロに横たわる重低音は、騎士や英雄を失った「君」が閉塞感に閉じるさまだったり、地を強く踏んで空を見るさまだったり、いろいろな聞こえ方がして、この曲を作った人の音楽の豊かさを全身で浴びているような錯覚を覚える。
 音源をちゃんと聞けるようになって、ようやくこの曲にパート分けがあることを知ったのだけれど、ライブでそれを意識して聞いたときの鮮烈な感動はどう言葉にしたらいいのかよくわからない。今までにない組み合わせ。思ってもいなかった声の相性。うっとりと、ため息が出たような気がした。
 
 アンコールは、もう何度もえずきながら、それでもできるかぎりの声を張り上げて叫んだ。周囲のお客さん、うるさくしてごめんなさい。あまりにも静寂が怖かったから……。
 
 後だしになるようでアレなんだけど、気球、飛ぶんじゃねえかな~~とは思っていて。
 異様に長いアンコール(バンドメンバーがステージに戻ってからゆうに5分は待った気がする)の中、なんらかの予感がしていた。
 ただ、アンコール1曲目が、M.S.S.Partyだとは思わなくて!けれど、キュートな気球の歌で歌いあげるにふさわしい、気分が高揚する曲なのは間違いない。もうあの不安定な状態で歌詞が飛ぶのは仕方ないわな……。きっくんが歌いださなかったの、気球がある程度進むまでの演出なのかな?ってちょっと納得しかけたんだけど全然違ったね。そういうこともあるね。
 「アンコールありがとうーーー!!」と気球の上で叫ぶメンバー、衣装のポップさと相まって某夢の国のショーみたいな不思議な高揚感がある。気球ひとつ2億円するんですよ!って言う無邪気さもね……あのかっこいいアンコール前の曲は何だったのか……そういうところが好きなんだけどさ。
 そして続くソロメドレー。純粋に一年前の武道館よりスキルを上げている感じを体感できるのがいい。あろまさん歌上手くなったなあ~。堂々とした振る舞いにキュートな詞と甘い歌声を重ねて、横浜アリーナ全員を魅了したの、小悪魔と言わずなんとすればいいんだか。えおえおは言わずもがな、I'll be...を歌う彼の一番好きなところはあんな不安定な場所でもしっかり歌うために姿勢を正すところです。
 
 彼らが初めてライブというものをした場所で奏でた曲をここに持ってくるのもね、あの頃のリベンジを謳った公演ならではの演出だな……。のびのびと歌うミクの声のなんと美しいことか。特にTHE WORLDSのたかCさんの旋律との歌がとってもよかった……。
 
 たくさんの言葉を伝えてくれたきっくんのMCも、終わりをにじませながらも晴れやかに、明るく進行していくのがこの公演で初めてのような気がする。
「次はドームだ!」と誰かが言った声に、苦笑いしながらも受け止めたきっくんが、この時ばかりは一切の不安もなく、幸福をいっぱいに抱きしめていてくれたらと思うばかりだ。
 We are MSSP!を歌いあげながら、きっと疲れ果てているであろう4人が最後の全力を振り絞っている姿はとても輝いていた。
 あー、横アリでライブできてよかったなあ。